年頭所感 代表幹事 西井 英正 image
 仙台経済同友会の皆様 明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。
 昨年の年頭所感では「米金利引き下げと日銀のゼロ金利政策の見直しによる緩やかな円高」を予想していましたが、見事に外れてしまいました。日米の金利政策の見方は決して悪くなかったと思いますが、市場の織り込み方等により、むしろ大幅な円安になってしまいました。つくづく、希望的観測を入れての予想はするものではないと反省しています。
 さて、本年に関しては、国内外ともに方向性が見えないと感じています。国内は少数与党の政府が野党の言いなりになるのか(様々な意見を取り入れるという利点はあると思いますが…)、短命政権で終わるのか、予想がつきません。
 国外に関しては、アメリカのトランプ大統領の政策がどのように日本に影響を及ぼすのか、流動化する中東情勢、ウクライナ情勢の進展はあるのか、韓国の政情不安、G7各国政権の不安定さ等、地政学的リスクはさらに増大しています。
 今年は乙巳(きのとみ)年です。60年前は、アメリカの北爆開始や日韓基本条約、戦後初の赤字国債の発行がありました。2013年にアベノミクス、2001年は小泉内閣、世界同時多発テロ、1989年は平成元年、消費税施行、天安門事件、ベルリンの壁崩壊がありました。巳年は「成長・変革の年」といわれるようですが、過去を遡ってみると「歴史的な転換、変革、動乱等」があり、それぞれの事象が、その後の社会に大きな影響を与えたことに気付きます。2024年までに起きた世界各地での戦争の結末や、政権交代による政策変更等が大きな変化点となるのかもしれません。
 改めて日本を見渡すと、先進国の中でも最も貧しい国のひとつになってしまっているのは否めないと思います。昨年10月までに3,000万人を超えたインバウンド需要が経済のけん引役の一つには違いないと思いますが、「日本が安い国だから選んだ」という理由も多くあると思います。
 失われた30年は成長が止まっただけでなく、世界の成長から取り残されてしまったことに、インバウンドの消費行動から気付かされた気がします。世界はインフレの中で物価と所得が並行して伸び、所得の伸びを享受できる層が消費を喚起していると思います。実際に海外に行かれた方は感じていると思いますが、全ての物価が日本の倍以上になっている感覚です。その価格を吸収できる消費力があるからバランスしているのだと思います。
 一方で、全ての人々が物価に応じた所得を得ているわけではありません。そこにさらなる格差が生まれていることも事実だと思います。その格差が、各国での様々な紛争や政治情勢の不安定さにつながっているのでしょうが、大きな事件等に発展しないことを祈るばかりです。
 こういった情勢の中で、取り残されている場合ではないと思います。今後も賃上げは続くと思いますし、続けなくてはなりません。その賃上げを吸収し、企業が成長するために必要な適正価格での取引を進めなくてはなりません。そのためには、既存市場での既存製品や商品・サービスではなく、適正な価値を認められる製品や商品やサービスを新たな市場に供給し、成長が実感できるような切掛けの年になってほしいと思っています。
 業界紙のインタビューで、今年を漢字一字で表してほしいと問われました。考えた末に「渾」という字にしました。渾の意味には「大きな流れになる」とか「ひとつになる」等の前向きな意味となります。一方、今の世界は「渾沌(カオス)」状態かと…。この「渾沌」とした世界が「渾然一体」となる年であればと思います。
 仙台経済同友会の皆様には、同友会の活動が有意義なものとなるよう進めてまいりたいと思います。皆様から忌憚のないご意見をいただきながら、よりよい経済団体活動になるよう努めてまいります。本年もどうぞよろしくお願いします。